七夕が近くなると、「たなばたさま」の歌を口ずさむ子どもたちを見かけるようになります。日本人ならば多くの人が歌える、「たなばたさま」の歌。 しかし、聞き慣れない単語もあり、意味がよくわからないまま歌っている人もいるのでは? また、ちょっと歌詞をまちがえて歌っている人も多いこの歌。いつ作られ、どんな意味をもつ歌なのでしょうか。
「たなばたさま」の歌の歴史と歌詞全文
「たなばたさま」の歌は、第二次世界大戦のさなか、1941年に生まれました。小学校の制度が改正され新しい国定教科書が作られたときに、国民学校初等科2年生(今の小学校2年生)の音楽の教科書に載せるために作られた歌です。作詞家、童謡詩人である権藤花代が作詞、詩人の林柳波が作詞の補助、作曲家、音楽教育家の下総皖一が曲を作りました。戦争中に作られたとは思えないほどやさしく、子どもの心に寄り添うようなあたたかさあふれる歌です。この歌には、子どもたちの幸せと、平和な未来への願いが込められているのかもしれません。
笹の葉/さらさら
軒端(のきば)に/ゆれる
お星さま/きらきら
金銀/砂子(すなご)
五色(ごしき)の/短冊
私が/かいた
お星さま/きらきら
空から/みてる
「たなばたさま」の歌詞の解説
情景が目に浮かぶような素晴らしい歌詞ですが、いくつか耳慣れない単語があるという人も多いでしょう。
まずは1番の歌詞。
「軒端にゆれる」の「軒」というのは、屋根の端っこの壁から張り出した部分を言います。軒端は、軒の端っこという意味です。マンションなどの集合住宅が多くなった現代では、家で飾る七夕の笹は手に持てるようなミニサイズのものがほとんどですが、 昔は大人の背よりも高い笹を庭に飾るのが主流だったため、軒の端まで届いた笹の葉が風に揺れているさまを歌っています。
「砂子」は、金や銀を細かい粒状にしたもののこと。今でいう、「ラメ」のことです。お星さまがきらきらしているのを見上げると、まるで金銀のラメを夜空に振りまいたよう、という美しい情景です。
つづいて2番の歌詞。
「五色の短冊」が「ごしょく」ではなく「ごしき」なのは、どの色でも良い訳ではないためです。五色(ごしき)とは、すべてのものは木・火・土・金・水の5種類を素としてできているという古代中国の考え方である「五行説(ごぎょうせつ)」を取り入れた、青(緑)・黒(紫)・赤・黄・白の色のことで、すべてのことがうまくいきますようにという願いが込められた色なのです。
みんなで七夕の歌を歌おう
大人になると、大きな声で歌を歌うのはなんだか恥ずかしいという人も多いと思います。しかし、歌詞の意味を知ってからあらためて歌うと、感慨深い七夕になりそうです。また、お子さんがいる場合は、歌詞の意味を教えてあげながら一緒に歌うといい思い出になりそうですね。