「生まれ変わってもずっと一緒に居たい」
そう願ったふたりは玄冬に輪廻省を訪れて無期限の転生届を出した。
最初にふたりは番いの狼に生まれ変わり共に野を駆けた。
次にふたりは大きな猛禽となって共に巣を守った。
その次には水辺の両生類となって縄のような交尾をした。
蛍となって光で会話した。
鮟鱇となって深海に棲み醜く融合した。
蜉蝣となって夜明けを待たなかった。
偶蹄類となって泥を舐めた。
蝸牛となって矢を刺した。
蜘蛛となって相手を血肉にした。
魚と磯巾着となって共生した。
狐と死病となって共に果てた。
幾千万の死をもってしてもふたりを分かつことは敵わなかった。
その頃には地上は冷えて多くの生き物が絶滅した。
ふたりは一つの蓮の花托に隣り合わせる種となった。
種の上には雪が降り積り、厚く凍ると、そのまま共に眠った。
ふたりは、光度を上げつづける太陽が次に招く永遠の朱夏に開花する。
作家:北澤奇実