織姫と彦星。七夕まつりの主役の二人を、遠距離恋愛中の恋人同士だと思っていませんか? 実は、恋人ではなく夫婦なのです。今で言うと、別居婚? それとも、単身赴任でしょうか。そんな二人が待望するのが、年に一度だけ会える七夕です。
織姫ってどんな人?
織姫は、中国の伝説では織女(しょくじょ)という名前の神様で、季節によって色まで変わり、虹のように輝くという美しい布を織ることができる機織りの名手。天の神様や天女たちの服を作るための布を織る仕事をしていて、絹糸を作るための養蚕や、お裁縫、また芸事全般の神様です。星座では、こと座のベガというとても明るい1等星が織姫の星。夏の間、織姫の星は空高く天の川の東側にきらめいています。
結婚前の織姫は、自分の身なりもかまわず仕事をしてばかりだったため、年頃なのにおしゃれもしない織姫を可哀想に思った父親の天帝からお婿さんを紹介されます。一目で彦星を気に入った織姫は、結婚の話を受け入れることにしました。
彦星ってどんな人?
彦星は、中国の伝説では牽牛(けんぎゅう)という名前の神様で、真面目で勤勉な牛飼いです。熱心に牛の世話をしているので、牽牛の育てる牛はいつも元気で立派な牛ばかり。酪農や農耕の神様です。星座では、わし座のアルタイルが彦星の星。こちらもとても明るい1等星で、織姫の星ベガとは天の川を挟んで西側に位置しています。彦星は、天帝にその勤勉さと真面目さを見込まれて娘のお婿さんにならないかと聞かれ、天帝の美しい娘をお嫁さんにできることを喜びました。
七夕(しちせき)の節句
七夕という漢字を「たなばた」と読むことを不思議に思ったことはありませんか?
実は、日本では昔から7月7日に「しちせきの節句」というお祭りがありました。これは、中国の伝統行事が伝わったもので、織姫にちなみ裁縫や芸事の上達を願うお祭り。それとは別に、日本には昔から7月7日に「乙女が機を織って神様にお供えし、豊作や無病息災を祈る」という神事があり、その神事で使う機織り器を棚機(たなばた)と言っていたため、いつの間にかこの2つがあいまって、「七夕」の字を「たなばた」と当て字で読むようになったのです。
この日に笹を飾るのは、笹の生命力の強さから、笹は神聖な植物であり葉のこすれあう音が神様を招くとされているからです。
現在日本で行われている七夕のお祭りは、中国の伝説や伝統行事、日本の伝説と神事、夏にまつわる様々な物語や行事が混ざり合って、今の形になりました。